「うつくしいひと」感想-在りし日の記憶

今日は「うつくしいひと」を紹介します。


  • 製作年:2016
  • 公開日:2016/3/4
  • 上映時間:40分
  • 監督:行定勲
  • 出演:橋本愛、姜尚中、米村亮太朗、高良健吾、石田えり他
  • 概要:問屋街の二階にある探偵事務所の玉屋末吉(高良健吾)の元にある日、依頼人が現れる。それは熊本県を揺るがしかねない事件だった。一方、大学生の透子(橋本愛)がアルバイトをしている喫茶店兼本屋に黒いコートの男性(姜尚中)が現れる…

評価:8/10(甘めです)
オススメ:今、日本人が観るべき映画

元々熊本県出身の行定勲を中心に作成された純粋な熊本県のPR映画です。
そう、制作当時は熊本地震が起こるなんて誰も想像してなかったわけです。
映画が完成したのは2016年、作中の映像は2015年に撮影されたもので、まさに最近まで熊本に「あった」自然や建物が映っているのです。

本作の鑑賞料金1,000円は映画の製作委員会を経由して、熊本県に寄付されるとのこと。
熊本に寄付した上に、実質タダで映画まで観れてしまうんだぜ。なんというサプライズ。

話自体は実にシンプルなのですが、個人的には懐かしさとか相まってなんとも言えない気持ちです。
熊本と浅からぬ縁があるわけなので、それなりに細かいネタもツッコんでいきます。

なお今回も橋本愛がかわいいので、それだけで観る価値は十二分でしょう。

※以下、完全ネタバレ

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熊本を揺るがす大事件

冒頭から探偵事務所に怪しい二人組が現れます。
世間にバレると自分達が熊本から消されかねないという大事件を「探偵の口は堅かですけん。」と依頼を引き受ける玉屋。
ちなみに依頼人の一人のおっさんがブツブツと呪詛のように唱えていたのは「くまもとサプライズ」という熊本県の公式PRソングの歌詞です。こえーよ!

そのネタがわかると予想できるのですが、その大事件、くまモンの脱走でした。確かにそれは一大事。

謎の男

一方、透子の元には黒いコートの男が店にやってきます。
彼は「若い女は美しい。でも、老いた女はもっと美しい」とホイットマンの詩を残し立ち去ります。
それと同時に最近不審者がうろついているという話が出てきます。
そしてその不審者は華道を教える母・鈴子(石田えり)の元にも現れます。

その日、透子は鈴子から昔の若い日の思い出と、自主制作の映像を観せてもらう事になります。
いつも髪を梳かす鈴子の櫛は、亡くなった透子の父が鈴子にくれたもの。
映像にはそんな若い頃の父と鈴子、そしてカメラマンの青年が映っていました。
3人はとても仲がよかったと懐かしむ鈴子。

ちなみに高校時代の3人の制服は姜尚中の実際の母校・済々黌高校の制服です。
背景の橋は熊本の名所・通潤橋です。

不審な影

不安になった透子は玉屋に依頼しますが、いつも暇を持て余してるはずの玉屋が珍しく依頼が入って忙しい模様。
しかし、透子の依頼を断り切れない玉屋は透子の依頼も受ける事になります。

鈴子のところで張り込む玉屋と透子でしたが、一向に怪しい男は現れません。
そんな時、透子の知り合いでバイト先の常連の田上(米村亮太朗)から「お母さんを付けてた怪しい男が見つかった」と知らされます。

現場に着いて田上と合流した2人ですが、玉屋は脱走中のくまモンを見つけ、田上と捕獲向かいます。
呆気にとられた透子の存在に気づいた不審な男は一緒に付き合って欲しいと声を書けられます。

過去の思い出

そこから二人は熊本城、菊池渓谷、阿蘇と周ります。
熊本城の綺麗な石垣や屋根がなんとも言えない気分になりますね。そんな在りし日の熊本城も映されています。
時々男は昔の3人での思い出と重ねながら…

そう、男は鈴子や透子の父といたカメラマンだったのです。
最後に櫛を透子に渡し、「自分は意気地が無く彼女に渡せなかった」と。

やはり後悔なく生きるのって大切ですね。
生きる後悔みたいな自分がいうのもなんですけど。

シンプルな物語ながら、風景とシンクロした美しさのある作品です。

野暮な不満点

若干橋本愛や高良健吾の熊本弁は若干ぎこちない感じがしますが、まぁ二人が方言を話している事自体がヒョギフ大統領の貴重な産卵シーンぐらい貴重なのでいいのではないでしょうか。
多分、無理矢理なまり増やそうとしたんだと思います。関西弁で同じことすると殺されてたけど。
厳密には熊本弁ではないのですが、九州弁映画としては「悪人」がかなり優秀なので、方便好きにはオススメです(原作の時点で、登場人物によって福岡弁や佐賀弁の違いまで掘り下げられていてかなりコア)
ただ大事なシーンはちゃんと分かるようになってましたし、重要人物の姜尚中が基本標準語なので物語の進行には問題はありません。

あと踊りが始まるのが唐突すぎるのをツッコんではならない(戒め

 

阿蘇山や熊本城にはよく連れて行ってもらっていたので、懐かしさが半端ないです。
今の熊本はどうなっているのでしょうか…
東北大地震と比べると早くもマスコミに見放され、人々の記憶から消えてしまうのではという気持ちもあります。
これをきっかけに熊本の素晴らしさを感じ取って貰えたら嬉しいですね、私が。

全国のイオンシネマでは30日にもチャリティ上映他、単館系ではポツポツと上映しているところがあるみたいなので、皆様は「これは寄付なんだ」と自分に言い聞かせて映画館に行きましょう。

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