「マネー・ショート 華麗なる逆転劇」感想-華麗なるタイトル詐欺

こんにちは。
今日は「残穢」、「ブラック・スキャンダル」以来1ヶ月以上ぶりの公開したばかりの新作です。
アカデミー賞脚色賞を獲った「マネー・ショート 華麗なる大逆転」です!


  • 原題:The Big Short
  • 製作年:2015
  • 公開日:2016/3/4
  • 上映時間:130分
  • 監督:アダム・マッケイ
  • 出演:クリスチャン・ベール、スティーブ・カレル、ライアン・ゴズリング、ブラッド・ピット、メリッサ・レオ、ハミッシュ・リンクレイター、ジョン・マガロ、フィン・ウィットロック他
  • 概要:投資家のマイケル・バーリ(クリスチャン・ベール)は、不動産証券を調べていく中で、サブプライム・ローンが数年以内にデフォルトする可能性があることに気づく。彼はCDAという金融取引に目を付ける…

評価:8/10(華麗ではない)
オススメ:経済やリーマン・ショックに興味のある方、テンポのいい映画が好きな方

原作はマイケル・ルイス。私の好きな映画である「しあわせの隠れ場所」や「マネー・ボール」の原作者でもあります。
最初っから期待しまくりです。

この映画、経済用語がガンガン飛び交っているのが特徴。
途中ジャグジーに浸かる美女や、ジェンガちっくなものを使って説明してくれるので、これで理解できる人もいるのですが、ここでわからないとちんぷんかんぷんになってしまいます。
あと、経済用語抜きにしてもテンポがかなり早いので、自分みたいに経済学部出てて経済用語がわかってても油断すれば振り落とされるレベルです。

一方で、経済用語さっぱりだったけど雰囲気だけでどういう感じで進んでいるかわかるっていう方もネットでそれなりに見かけるので、実はこの映画考えるな感じろ系なのかもしれません。

※以下ネタバレ&長文

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4人の登場人物

ここでいつもあらすじしつつの解説みたいになっちゃうので、思い切ってウォール街の住宅ローン神話に挑んだメイン4人を一人づつ掘り起こしてみましょう。

まずはクリスチャン・ベール演じるマイケル・バーリ
投資家なのですが元々は医者をやっていました。なので作中ではドクターと呼ばれてたり自称していますね。
彼は金融業の人間らしく無く超ラフな服装で仕事しています。
仕事場ではドラムスティックを手にヘビメタを爆音で聞いている変人っぷり丸出しです。
そして作中では数学オタクっぽい言動もある彼ですが、だからこそある大きな事実を見つける事になるのです。
それがCDO(債務担保証券)に内包されているサブプライムローンがデフォルト(債務不履行)に陥るということ。
彼はCDS(クレジット・デフオルト・スワップ)というデリバティブ商品を用意し取引する事にしました。
(後で詳しく解説しますが、)住宅ローンが崩壊しないとバーリにはお金が入ってこない、アメリカの投資銀行からしたらそんなのありえないと思って喜んで売ります。

それを知ったのがライアン・ゴズリング演じるジャレド・ベネットです。
彼は銀行員なのですが、ウォール街の多くの人間とは違い住宅ローンは崩壊すると考えた側の人間です。
なのでCDSを商品として売り込もうとします。
彼はいつも自信満々、ドヤ顔連発。さらに彼は映画を観ている私達に語りかけるというぶっ飛んだ演出をかましてきます。
他のサイトを観ていると彼のイメージがとてつもなく低いのですが、私は4人の中では一番好きです。
(彼の「演出」の部分は後半に)

ベネットは短期で曲がったこと大嫌いな投資家のマーク・バウム(スティーブ・カレル)にCDSを売り込みに行きます。
彼や仲間達はベネットに懐疑的でしたが、バウム達は自ら住宅ローンの実態を調べ始めます。
そして、サブプライムローンの実態を知ることになるのです…
バウムは過去に兄を自殺で亡くし、心に深い傷を負っています。

CDSを耳にした人間は他にいました。
ジェイミー・シブリー(フィン・ウィットロック)とチャーリー・ゲラー(ジョン・マガロ)です。
彼らもCDSで儲けようとしますが、手元の資金では銀行家に相手をしてもらえません。
彼らは以前近所に住んでいたことで知り合った元銀行家のベン・リカート(ブラッド・ピット)に手伝ってもらうことにしました。
リカートは金融界を引退し、野菜を育てるなど悠々自適に暮らしていたのですが、彼らの話が信憑性があると思い、協力することになります。

用語解説

あー、既に用語が沢山出てきましたね。
自分も説明するのが苦手なので、あえて誤解や多少の間違い覚悟でとにかく一つ一つの言葉を簡易化していきます。
(でも、他のサイトもそんな感じだから気にしないことにした)

モーゲージ債=(MBS: Mortgage Backed Securities)
ざっくり言うと住宅ローンの債権(お金を返してもらう権利)を証券という形にしたものです。
わからなければ住宅ローン組んだ時の借用書を証券化したものだと思ってください。適当だなおい。

流れとしてはにとりが家を買いたい!ってなった時ローン、つまり銀行からお金を借ります。
そして借用書を書きます。
その借用書を銀行は証券を発行しているところに売ります。
発行された証券を買った投資家はにとりがローンを返すとその利子を受け取ることができます。
もちろん株みたいに転売することもできます。

作中にある通りアメリカではモーゲージ債は発行するところが政府系の機関なんで安心して買え、
かつ利子が入ってくる安心かつ手堅く稼げる金融商品
なわけです。

サブプライムローン
これは知ってる方も多いと思います。
低所得者向けの住宅ローンなわけですが、作中の通り審査とか一切無しというドブに金を捨てる勢いで貸しているのです。

CDO(=Collateralized Debt Obligation:債務担保証券)
サブプライムローンをたっぷり含んだモーゲージ債をひとまとめにして商品化したものがCDOです。
作中では古い魚を他の具材とひとまとめにしてシチューにしてしまうという解説がされています。
シチューにしてしまえば、多少ヤバいものが入っていても見た目にはわからないというわけです。
さらに世界のグルメ達が美味しいと言えば自分達も食べたい!ってなりますよね?

格付け機関

作中の表現から派生させて「世界のグルメ家」と私は表現したのですが、それが格付け機関です。
金融商品が安全かリスクがあるのかを決めるところです。
AAAが最高で、AA、A、BBB…という風に評価されます。
AAAが付けられた商品絶対損しない、安全なもの!という評価です。
なんとCDOはヤバいサブプライムローンが含まれているのに、信用度の高いモーゲージ債も入っているからと常にAAAだったわけです。
なのでどの投資家達もCDOを買いまくっていたのです。
ところが、実際は中身はヤバいのになぜ中身も確認せずAAAを出し続けてたのか。
最後にも出てきますがAAA出さなかったら他社の格付け機関に顧客をと取られてしまうからというとんだクズ理由でした。
AAAってそこら辺の国の国債より上ってことですからね。国債より高い信用度とは…

CDS(=クレジット・デフオルト・スワップ)
一種の「保険」商品です。
CDOに対しての保険で、もしCDOがデフォルト、つまりCDOに含まれてるローンが返済できなくなって借用書が紙くず同然になってしまった場合に
保険料が契約したところから貰えるという仕組みです。

空売り(ショート)
例えば、
証券会社から株や債券を借り、売ります。A株を売って100円だったとします。
後日株価が下がってき、A株を90円で買い戻します。
それを証券会社に返すと手元に10円残り、それが利益となります。
これが空売りと呼ばれる方法です。
厳密には証券会社は借りる人間から手数料が取れるので貸すわけですね。

本作の魅力とは

ジャレドがバーリのシーンのナレーションで「俺はこんな奴じゃない。この後出てくるク
ールな男さ」とか
シーンをぶった切って突然カメラに向かって話しだしたり、
経済用語をアメリカの有名人に紹介させるとか言い出すし、
バウムを信用させるために、英語しゃべれないけど数学世界大会チャンピオン(嘘)の中国人を用意したり、
(その中国人も「英語喋れるし、数学大会は2位だ」とかカメラに向かって言い出すから面白すぎるでしょ!)
もうそれだけでお腹いっぱいじゃないですか。
今までのくだり全部消してジャレドの素晴らしさだけを伝えたい、マジで。

ジャレドはバウム説得の際にジェンガを使って説明したり、
専門用語を「ウルフ・オブ・ウォールストリート」のマーゴット・ロビー等アメリカの有名人が解説するというシーンも面白く、観客を飽きさせないという意欲が感じられる素晴らしい演出だったと思います。

一方でバウムは最後売るのを躊躇ったり、
リカートがシブリーとゲラー2人に向かって言った「俺たちが勝つと死亡者や失業者が増える」という言葉も重いですね。
勝ったけど=アメリカ経済の崩壊なので素直には喜べない苦さ・虚しさというものがありました。
そんな部分を含めて個人的には好きな映画です。

本当はバウムについても詳しく語りたいし、リカートサイドの話も大好きなんですが、
管理人これ書くのに約5日かかったのでもう、やめておきます。
(それでこのクオリティかよ!って突っ込みはご遠慮ください死んでしまいます)

一応邦題に文句言っておく

既に多くの方が言ってるタイトル詐欺っぷり。
「華麗なる逆転劇」ってどこに華麗さがあったのでしょうか。ジャレドかな?そうなのかな?
「華麗なるギャツビー」の華麗さの1億分の1も無いです。
あと、マネー・ショートってなんだよ。
直訳するとお金無い→金欠…?
邦題が「世紀の空売り(原作本の邦題)」なら減点しなくてよかったのに…

参考
今回記事を書くにあたり、パンフレットや公式サイトはもちろん、以下の素晴らしいサイトを参照にさせていただきました。
マネー・ショート 華麗なる大逆転 (The Big Short) ネタバレ感想 勝利の代償 – きままに生きる 〜映画と旅行と、時々イヤホン〜
『マネー・ショート 華麗なる大逆転』幸せはやってこない(映画ネタバレなし感想+ネタバレレビュー) カゲヒナタのレビュー
知らないと映画館で爆睡!? 映画に必要な経済用語を1枚の画像でスッキリ解説! 実話に基づいた話「マネーショート /The Big short」批評 – Machinakaの日記
『マネー・ショート 華麗なる大逆転』 一番大事なもの|映★画太郎の MOVIE CRADLE
映画「マネー・ショート 華麗なる大逆転」について叫びたかった(感想・演出紹介) : マスティの「アレが叫びたがってるんだ」

観る前にこれを知れば『マネー・ショート』がもっと面白くなる!5つの経済用語 | FILMAGA(フィルマガ)
群を抜いてわかりやすい、かつ相当な狂気を感じる記事です。一番オススメ。

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