アニメ映画のレビューが最近ご無沙汰な気がしたけどそんなことはなかった(挨拶)
さて、今日は現在青森(3月からの上映でした)、静岡、地元和歌山、そして沖縄という島根入れるといい感じで田舎サミットな感じのとこで上映中のアニメ映画「ハーモニー」の紹介。
全国公開は11月で私は全国公開時に新宿で観ました(当時は東京在住)
- 製作年:2015
- 日本公開日:2015/11/13
- 上映時間:120分
- 監督:なかむらたかし、マイケル・アリアス
- 声の出演:沢城みゆき、上田麗奈、洲崎綾、榊原良子、大塚明夫、三木眞一郎、チョー、森田順平他
- 概要:学生時代圧倒的なカリスマを誇っていた御冷ミァハ(上田麗奈)、そしてそれに共感した霧慧トァン(沢城みゆき)、零下堂キァン(洲崎綾)は社会に抵抗するため3人で自殺しようとするものの、ミァハ一人だけが死に、2人は助かる。13年後WHOの監査官になったトァンは謹慎中の日本でかつてのキァンに再会する。一緒に食事する2人だったが、突然キァンが「ごめんね、ミァハ」という言葉を残し自殺する。トァンは世界規模で起きた自殺テロに死んだはずのミァハの影を重ね事件を追う。
評価:8/10
オススメ:全ての人(ただし、精神的体力が残ってる時に)、ミステリー好きな方
この映画は去年鬱映画としても話題になりましたが、実際気分塞いでる時に観に行くと本当に精神が死にます(体験談)
にとり的ポイントは
- Project Ito
- トァンとミァハ
- 理想の世界とは
です。
以下解説です。
※ネタバレあり
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1.Project Ito
最初はこの作品の周辺の解説からです。
原作者は伊藤計劃という方で、当時SF界からかなり注目されていたにも関わらずデビューからわずか2年、ガンでこの世を去っています。
Project Itoはノイタミナ(フジテレビの深夜アニメ枠)が伊藤計劃の3作品を映画化するという企画の一つです。
(厳密には「屍者の帝国」は途中で伊藤計劃本人が亡くなったため、円城塔との共著になっています)
この作品は「屍者の帝国」に続いて2作目の劇場公開となります。
作品自体は今後公開予定の「虐殺器官」の後の時代を意識して書いたものではあるのですが、
話自体は繋がってないので初めての方でも大丈夫です。
この作品、アニメ「ハチミツとクローバー」、「PSYCHO-PASS」等を生み出してきたノイタミナの名物プロデューサー、山本幸治プロデューサー自ら脚本を書いているという珍しい作品になっています。(普段書いていないです)
「屍者の帝国」は共同脚本だったのに対し、本作は山本P単独で書かれています。
2.トァンとミァハ
本作は百合好きな方に大変注目されてますし、実際映画ではそんな感じもしなくなかったですが、原作には一切そういう要素がありません。
(原作についてくる生前のインタビューでも性別は後から決めたとか)
トァンにとってはミァハは作中にあったように彼女にとってのイデオローグなんですよね。簡単に言うなら指導者、カリスマなんですよね(ちょっと違う?)。
ミァハはこの病気のない身体を監視された社会に抵抗するために自殺しようと考え、トァンもついていきます。
だが、実際はミァハだけが死にトァンは生き延びます。
WHOの監察官になったトァンはある日、多くの人が身体を監視されているはずなのに勝手に自殺するというテロに巻き込まれます。
トァンは犯行声明を聞き、ミァハが関わっているのではと思って捜査を始めます。これが物語の序盤部分。
このミァハをトァンが追っていく中で出てくる手がかりを辿って最後繋がっていく感じがいいですね。
しっかりと組み立てられた物語の筋と謎が解き明かされていく、ミステリー的要素も強く含んでいます。
SFが苦手な方でも、私のようなミステリー好きには結構この作品楽しめると思います。
ただ原作と映画ではトァンの心情の描かれ方が大きく異なるので、ラストの感じ方が全く異なってきますね。
原作はトァンにとってのミァハはあくまでも憧れの存在であって、映画での恋愛チックな感じは全くありません。
3.理想の世界とは
ミァハは紛争地域で陵辱されていたところから、日本に、トァンの嫌う病気のない「優しさと思いやりに潰されそうな」世界に連れてこられます。
そこでミァハが目指したのが意識のない世界、つまりハーモニーの世界…
元々「意識」の無かったミァハが手にした意識で辿り着いた結論が結局意識の無い世界というのが悲しすぎます。
この物語がガン闘病中に病床で書かれたのということ考えるとさらに凄いですよね。深い、深すぎます。
この映画を観て理想の世界とは、と深く考えさせられる作品でした。
若干脱線しますが…トァンのいる世界ではWHOが事実上世界で最も権力のある機関になっているのが凄いですけど、先日のタバコの規制問題を見てるとさもありなん、という気がしますね。
追記
この作品、ほとんどがトァンの一人語りがメインになっていて、アニメーションは世界観の表現全振りで動き的なものはとても少ないです。
それでも沢城みゆきさんは相変わらず素晴らしい演技ですし、
上田麗奈さんが普段演じているポンコツ明るいキャラとは全く異なるゾッとするような魅惑の御冷ミァハを演じている点も注目です。
なので声優好きな方も是非。
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