「海よりもまだ深く」感想-なりたいものになれなかった大人達へ

今日は「海よりもまだ深く」を紹介します。


  • 製作年:2016
  • 公開日:2016/5/21
  • 上映時間:117分
  • 監督:是枝裕和
  • 出演:阿部寛、真木よう子、小林聡美、リリー・フランキー、池松壮亮、吉澤太陽、橋爪功、樹木希林
  • 概要:特に何も起きません。

評価:9/10
オススメ:大人全員

超個人的に大好きな是枝裕和監督最新作です。

過去の監督作「歩いても歩いても」、「奇跡」に似ていると言われてますが、まさにその系譜で作っているのだと思います。
実際離れ離れになった家族の話なんですものね。

タイトルが独特ながらも、覚えにくさもありますが、「歩いても歩いても」と同じくある曲の歌詞から取っているものです。
(具体的な曲名は後半で)
なお、「海未よりもまだ深く」って変換するグーグル検索は無能。

今回も安定の「何も起きない」っぷりが炸裂しています。
物語的には本当に特に何も起きない、でも日常系の退屈さは一切無く、間延びせず、本当にどうしてこんな面白いのが作れるのかが不思議な監督です。

※以下ネタバレ?注意

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ザ・ダメ人間 良多

阿部寛演じる良多はまぁそれはもうどうしようもなくダメ人間です。
一度賞を獲っただけの自称小説家で、鳴かず飛ばず…ならまだしも書いてすらない状況。
小説の取材と称して働き始めた探偵事務所では所長(リリー・フランキー)に内緒で、調査結果をもみ消すor変えるからと依頼人や時には調査対象に働きかけては通常の依頼料以上をふんだくり、その利益を全部ギャンブルにつぎ込んでいるという有様。
妻とは離婚、息子も妻に取られ、頼りになるのは母・淑子(樹木希林)の経済基盤のみ。

そんな彼の唯一の楽しみは月一度の息子・真悟(吉澤太陽)との大切な一時…のはずが、養育費も満足に払えないので、元妻の響子(真木よう子)には「もう真吾は会わせない」と脅される始末。

もうね、素晴らしいダメっぷりなんです。
でも、こんな奴いそうだよなぁっていうのが是枝監督の描く「人」なんですよね。

そんなある日、探偵スキルを駆使して真悟を付けていると(=ただのストーカー)、既に響子に新しい恋人(小澤征悦)がいることが発覚する。
ついでに次のプレゼントに上げるはずだったグローブをその恋人に買われていたことも知ってしまいます。
もうね、未練タラタラ感が凄いんですよね。

台風が起こしたひととき

そんな月一回の真悟との日。
良多は無理矢理真悟を淑子の家に招き、そして響子も淑子の家に迎えに来させます。
しかし、台風が直撃し良多と響子、真悟の3人が一つ屋根の下になるわけです。

ただ、この物語は、特に是枝監督ファンなら既にお察しですが奇跡が起きてまた距離が近づいていくなんて事はありません。
むしろ、その逆で良多がほんの僅かだけど自立する(かもしれない)、別れの話なのです。

「幸せっていうのは何かを諦めないと手に入らない」という淑子の言葉、そしてその後にラジオから流れるテレサ・テンの「別れの予感」。

海よりもまだ深く 空よりもまだ青く
あなたをこれ以上 愛するなんて
わたしには出来ない

流れてくる歌詞はこういう内容なのですが、まさに良多の事を言ってるものですね。

そうして、また何か変わるかもしれないし、変わらないのかもしれない…
でも心満たすものがあるのが本作の魅力です。

 

とにかく細かい動作一つ一つが他の監督の作品にはない、日常臭さがとにかくいいんですよね。
是枝監督のファンなら文句無し、初めての方も色々共感できることが多いと思います。

あと池松壮亮君が相変わらずの癒やしポジなんで、オススメです(真顔

そういえば、前半で立川で突然良多が「ここは聖地だから」とか言いながら動き出したので、シネマシティに行くと思ったウォーボーイズ並びに戦車道履修生は全力で反省されたし。(向かった先は競輪)

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